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初めての方はカテゴリから説明へどうぞ。 古い小説から最近のまでおいてあります。 古いのはなんだか恥ずかしいのでいつ消すかわかりません。



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『わぉ…』

高く高くそびえる石の壁を見上げながらフィリップは感嘆の声を漏らした。
ミラの警備は厳重だ。


神様をやっつけるために強くなりたくて此処へ来ました、などと口にすればミラの住民はパニックだ。
デュオ討伐という使命は出来る限り誰にも漏らしたくない。
しかし全うな理由が無ければミラの国境を踏むことは出来ない。

『ここまでは馬車があったけど…ここからは本当に僕一人の戦いだ…』

つい先程までそばにいた馬車は、フィリップ自ら領地へ帰るようにと命じた。
巻き込みたくはない、もう、家族も、使用人だって、失うところは、居なくなるところは見たくないのだ。
兄のように。


フィリップは覚悟を決めた様に息を呑み込む。
手には白い封筒。
貴族である父がミラの国王へ向けた書をしたためていたのだ。
これがミラへ入る理由になる。ミラへの入国許可を受けるための大切な書。


『いつ、帰れるのかなぁ…』

いつ我が家へ帰れるだろうか、早々に沸き上がる甘えを振り切るように首を振り、フィリップはミラの大門を叩いた。




『ようこそ、ミラへ。君の事は以前より君の父上から聞いていたよ…彼とは昔同じアカデミーに居たことがあってな』

ミラの国王のおおらかさに、フィリップは心底安心していた。
大事に育てられた『お坊っちゃん』であるフィリップにとって領地の外はまるで別世界、そこで手を差しのべてくれる国王に、ひたすら感謝したい気持ちだ。

『事態は把握した、早急に君に師をつけよう…ヴィーデ!』

国王に呼ばれ、謁見の間へやってきたのはフィリップとそう歳の変わらないであろう青年。
赤茶の髪に碧の瞳、やや白い肌に表情はどこか薄い、東に住む種族の特徴を完璧に受け継いだ容姿である。

『お呼びですか…?』

静かな声にはしかし東のものではない訛りがかかっていた。
フィリップは不思議そうに首を傾げる。

『彼が…僕の先生、ですか?』

碧い目を真ん丸にして、フィリップが青年を見つめる。
二人の瞳は同じ碧なのに、まるで違う色に見える。

『どこのお坊っちゃんか知らんけど、幸せそうな顔しよる…それで世界を救うなんて言うンやから、グラスガーデンももうオシマイやな』

表情ひとつ変えずに言い放つと青年はひらひらと手を振りながら謁見の間から去っていく。

『稽古は明日朝六時からや、遅れたあかんで』



碧い二つの視線が絡むことはなかった。






はい、オリジナル連載久々に書きました。
フィリップ君とヴィーデ君、険悪になりそうでつが…
ぬふ。
あ、ちなみにヴィーデ君は眼鏡だよ、関西弁のうえに眼鏡だぜ。
友人が作った主役級のキャラだからけれからじわじわ大活躍…?
ぬふ。
まだまだ序盤序盤序盤。
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『まさか下界におりることになるとはね』

『こっちかて驚きですわ、カトル様が自らおりてくるなんて』

かつん、かつん…
白い石の床を、靴の底が蹴る。
金髪の青年の後ろを、銀髪の男と赤髪の男が続く。

『この神殿に篭るのも百年振り…いやそれ以上だ、前はね、確かノヴァとアポロが本気で喧嘩をした時だった』

青年―竜と大地の神カトル―はくつくつと笑いながら神殿の奥へ向かう。
そして冗談のようなその話に、ずっと口を閉ざしていた赤髪の男が口を開く。

『今回は喧嘩では済みそうにありませんね…これは魔物と、それ以外の五つの種族との戦争だ』

元々険しい表情を更に険しくして赤髪の男―ドラゴス―が言う。
それを横目に見た銀髪の男―シャドール―がドラゴスの肩を叩いた。

『久々に暴れられるやん、そう重々しく考えなや』




『で…僕はここに篭って竜騎士達に指示を飛ばさなきゃならない、竜族を守るのが僕にとっての戦争、だ』

神殿の一番奥、カトルが大きな椅子に腰をおろす。

竜族は一見人間と変わらない外見であるが、高い戦闘能力を持つ事から戦争の度にかり出された過去を持つ悲しい種族だ。
中でも戦闘能力の高い者が竜騎士として選ばれる。
竜騎士は種族の長、カトルの命令を忠実にこなす、その名の通り騎士だ。

そしてシャドールとドラゴスは最も力のある竜騎士。

『君達二人には、竜族を守るのとは別に頼みたいことがあってね』

『あら、そのために呼ばれたンちゃいますの?』

石の床に直接座り込んだシャドールが少し驚いた様子で問いかける。
ドラゴスは壁に寄りかかったままだんまりだ。

『僕達竜は自衛できる程度の力は大抵の者が持っているよ。危ないのは子供や怪我人、病人だろう。それよりも危険なのは…』

『聖獣と妖精、ですか』

ドラゴスの静かな声にカトルが頷く。

『彼等は決して強くない、ミストやルナがついているとは言え、万に一つ選ばれた者がデュオの手に堕ちてみろ、大変なことになる』

選ばれた者。
六種族に一人ずつ存在する、神を消す力を持った者。

『つまりあれや、俺とドラゴスとでその、力を持ったヤツを守れいうことですか』

『まぁそういうことだね。シャドールには聖獣の、ドラゴスには妖精の、それぞれ選ばれた一人を守ってやってもらいたい』

これは守る為の戦いだ。
人間の少年がたった一人神に挑む、これは激しい戦争になる。
僕達はその戦禍から種族を守らなくてはならない。
君達は剣だ、強い強い剣、決して折れてはならない。
守る戦いは、つらい。
けれど、折れては、ならない。


【竜】



竜の神さまカトル、竜族と竜騎士についてのお話。
さまざまな種族が絡み合う、そんなお話。
あの後ノヴァは風の様に消えた。
顔を顰めて、地上の空気は合わないと言っていた。

『時間は有りません…、けれど、その、僕は力不足だと思うのです』

呑気にケーキを頬張りながらフィリップが話す。
このマイペースな性格は母親譲りだ。

『それで、東国のミラへ向かうと』

東国のミラ。
そこは山と海とに囲まれた閉鎖的な国であり、そして武術にたけた民の多い国。

『いくら神を消す力が僕の中に眠っていると言われても、それだけで敵う相手とは思えない、それにきっと、デュオの元へたどり着くまでに、魔物達と戦うことも必ずあるはずです…その為にも、力をつけたい』

カシャン、フォークが皿に置かれる小さな音がした。
父は息子の決意に無言で頷き、母は娘の肩を抱いていた。

『兄さんにも会えるかもしれませんから』

椅子から立ち上がったフィリップが、壁にかかる家族の肖像画を眺める。
そこには幼いフィリップ、エリーの他にもう一人、同じ髪の色、同じ瞳の色の子供が描かれている。

彼の名前はアグリアス・カノン。
フィリップの双子の兄だ。

幼い頃、魔物に連れ去られた。

恐らく食われてしまったのだろうと両親や家の者は悲しんだが、フィリップだけは生きていると信じている。
庭で遊んでいた二人、アグリアスだけが魔物に連れ去られたのだ。
その画はフィリップの幼い瞳に焼き付いた。
未だに離れない。

その事件以来、フィリップの元来穏やかな性格は更に更に穏やかになった。
心には、見えない傷が残ったようだった。

『フィリップ、アグリアスはもう…』

『生きています』

フィリップには珍しい、力強い声。

『兄さんは生きています、必ず、どこかで。僕は信じています』

父も母も、それ以上何も言えなかった。
いつの間にか大きくなったなぁ、母は息子の姿に小さく息をついた。


少年は、旅立つ。


【双子】




はい、次は理不尽なたびだちです!(笑)
今日は水面氏といろいろ語ったのでがっつり書きたいなぁ…
日記は後程。
『お兄様、お兄様ー?』

可愛らしいドレスを身に纏った少女が長い廊下を駆ける。
お兄様…兄を探している様子だ。

『お兄様…もう、風邪ひきますよ!』

部屋へ入っていけば、雪の降る日だと言うのにお兄様と呼ばれた彼は窓を開け放って外を眺めている。

『あ、エリー…だって見てよ綺麗な雪だ』

少し耳に痛いくらい高い妹の声に振り向いた彼―フィリップ―は、穏やかな口調で返す。
それでも静かに窓を閉め、窓際を離れてエリーの元へ向かう。

『準備が出来たの?楽しみだな…母さんどんなご馳走作ってくれたんだろう』

妹の背にぽんと手を当ててからゆっくりと部屋を出る。
そう今夜はフィリップの誕生日パーティ、カノン家の人間は朝からせわしなく準備をしていたのだが、ようやくそれも終わり、妹のエリーがフィリップを呼びに来た、というわけだ。

『私ねお兄様のためにケーキを焼いたの!』

『ありがとう、嬉しいよ』

エリーの方がパーティを待ちきれない様子だ。
のんびりとした足取りのフィリップを急かすように服の裾を引く。




『フィリップ、誕生日おめでとう!』

家族、そして使用人達からの暖かい拍手。
フィリップは人の輪の真ん中で、少し擽ったそうにはにかむ。

カノン家は貴族の一家で、裕福な家庭であった。
フィリップにエリー、二人の子供にも恵まれ、幸せな生活を送っていた。
今夜、それが崩れるとも知らずに…。

『さぁお兄様、早くロウソクの火を消して?』

『少し待たないかエリー、フィリップがのんびり屋なのはわかっているだろ?』

父の冗談に細やかな笑いが溢れ、それはそれは幸せな誕生日パーティの風景。
フィリップが息を吸い込み、ケーキのロウソクを吹き消そうとした、その時だった。


『フィリップ・カノンへ告ぐ』


温度を持たない冷たい声。
その声が響いた途端、一つの窓が開き冷たい空気が部屋に入り込む。
部屋の中心には、銀髪の男が浮かんでいる。

『選ばれた少年よ、聖地グラナダを目指せ』

『貴様何者だ!』

突然の事態に父は声を張る。
壁にかかった猟銃を手に取ると、銃口を銀髪の男へ向ける。

『私は人間と光を支配する神、ノヴァ』

『神…?六神の一人、ノヴァだと言うのか…?』

その名に、その場に居る誰もが目を見開いた、勿論フィリップも。

『神様が…僕に何の用なんですか…?』

フィリップは一歩踏み出し、ノヴァを見上げる。
臆した様子も無く言葉を投げ掛ける姿に、ノヴァが口角を僅かに持ち上げた。
笑みを湛えた神のその表情に、使用人の一人が溜め息を漏らしたようだった。

『君は選ばれた少年なのだよ、フィリップ。私に、神に選ばれたたった一人の人間だ…。各地で魔物が暴走しているのは耳に入っているだろう。あれは六神の一人、魔物と闇の神デュオが原因だ…』

『各地の暴動の原因が神だと言うのですか?』

ノヴァは悲しげに頷く。
そして続けた。

『奴はもう止まらん、消す他無い…しかし我々神と神での争いはかたく禁じられている。そこで選ばれたのが…君だ』

君は神を消す力を持っている

誰もが耳を疑った。
誰も信じたくなかった。

『僕に…神を消す力が…?』

『だが今は未だ力は眠っている、聖地グラナダを目指せ、グラナダで力が解放される』

二人だけで進んでいく会話に、エリーの糸が切れた。
兄の元へ駆け寄り、その腕を強く強く掴む。

『どうしてお兄様なの?!どうしてお兄様が危険な事をしなくてはならないの?神さまだからって私のお兄様を連れて行かないで!』

泣き出しそうな顔だった。
ノヴァは宙からふわりと床へ降り、エリーの柔らかなハニーブロンドの髪を撫でる。
そして足元に方膝をついてみせた。
この世界で最も尊い存在である神が、たった一人の少女に頭を垂れた。

『君は幸せだなフィリップ』

『……、えぇ、妹にこんなに愛されて、神に選ばれこんな大きな使命を頂ける、光栄なことです…。だからエリー、泣かないで?』

碧い瞳からは大粒の涙。
同じ色の瞳で、フィリップはエリーを優しく見つめ返す。
ノヴァは立ち上がり、両親にも深く深く、頭を下げた。

少年に与えられた使命を、誰一人、拒否できなかった。

悲しい戦いの、始まり。





ぐだぐだ…orz
こういうお話って動き始めるまでがきつい。
ノヴァのセリフがモロに説明ばかりっていう(笑)
こっから理不尽にもフィリップ君は旅に出ます、えぇ初期ドラクエなみに理不尽に。
そしてこっからごろごろといろんなキャラが出てきます。
頑張るぞ。
竜は世間を嫌い

妖精は身を隠した

聖獣は傍観し

妖魔は戦いに

魔物は弱者を食い

神々は離れた



人間は…



彼は、神を殺す力を持っている。





【神殺しの子】





『どうするつもりだノヴァ、デュオの暴走を止める者が居なければ世界の均衡は崩れるばかり…デュオを追放したお前にはこれを解決する義務がある』



『…まぁそう荒れるなよ、アポロ、神一人消すことのできるヤツなんてそう簡単には見付からない。僕達で解決できればいいが神同士の争いはご法度だ』



『だからと言って放っておける状況じゃないわ、デュオのもとで魔物達が活性化してる…妖精達が危ないわ、それだけじゃない、人間だって危険よ』



『デュオは確かに追放されても仕方が無かった…彼の思想は危険すぎたもん。けどミストの言う通りだよ、このままじゃ下界が危ない、下界が崩れたらこの世界樹だっておしまい』



『……、最早、あの子にかけるしかあるまい』



『ノヴァ…、けれどあまりにも酷だわ、彼に罪はまったく無い…』



『ミスト、躊躇している暇は無いのだ…』



『さ…決まったなら僕は竜騎士を招集する』



『俺は力の有る妖魔に話をつける』



『妖精達は戦いを好まないわ…悲しい知らせをしなくちゃならないわね…』



『聖獣達にも分かってもらわなきゃ、この戦いの意味』



『すまない…君には、あまりに辛いことかもしれないな…』





夢幻世界グラスガーデン。

世界は天へ伸びる世界樹を中心に動いていた。



人間と光の神ノヴァ

妖魔と炎の神アポロ

妖精と水の神ミスト

聖獣と時の神ルナ

竜と大地の神カトル

魔物と闇の神デュオ



世界樹の上で六人の神々が六種族を統治、世界は一定の均衡を保っていた。

しかし界暦138年、闇の神デュオが暴走、魔物達を束ねグラスガーデンの崩壊、新生を企てた。



いつか起こり得るであろう神々の、自分達の暴走をおさえる為、神々は皆それぞれの種族のたった一人に力を与えていた。



神を消す力を――――。





界暦138年、12月24日。

神々の間で、神を消す力を持つ人間へデュオ討伐の使命を与えることが決まった。

その日は不幸にも、彼の、フィリップの誕生日であった。



世界は一人の少年の手に委ねられた。



名前は、

フィリップ・カノン。











かなり、かなりかなり昔からダチと話ていたオリジナルファンタジーです。

ぼちぼち連載していきます。

かなり長くなる恐れあり。



・水面氏へ私信

引っ張り出しました、UP(笑)

ミストさんとかルナちゃんとか彼とか彼とか彼女とか…使わせていただいてよろしいでしょうか?

昔楽しく語ったいろんな設定、使っていきたいと思います!

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プロフィール
HN:
詩子
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/08/13
職業:
学生
趣味:
買い物・音楽鑑賞
自己紹介:
小説や日記、小ネタ等を投下していくヲタクなブログです。サイトの代わりに運営しているのでコメントやメッセージは大歓迎です。
リンクについては同人サイト様につきフリー。報告や連絡いただければそちらにも遊びにいきます♪
コメントするのが嫌だわ、というシャイなお嬢さんは(笑)
utagawa_hikaru☆hotmail.com
(☆を@に変えてくださいね)
こちらまでご連絡ください!

ジャンルはサイトをやっていた頃とほとんど変わりませんが…
テニス(忍受け、跡受けなど)
サガフロ(いろいろ)
もしかしたらアイシ(阿雲)
オリジ(気が向けば)
…こんな感じです。
同志様は是非仲良くしてください!

何かありましたらお気軽にご連絡を。
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